東海市の建築設計事務所 空間工房 服部です。
主に、木造住宅の新築、リノベーション、
耐震・断熱などの性能UPを兼ねたリフォームの
設計監理の仕事と
庭づくりや建具・断熱など小さな工事の仕事をしています。
お客様から、直接依頼を頂くことが多い設計事務所です。
住宅専門の設計事務所の日々をお伝えしています。
2021年の冬にご相談を頂き、
劣化調査・耐震診断→設計→補助金申請→工事とすすんできた
「耐震改修と建物の劣化の補修」 を同時に行う工事が完成して、お引渡しを終えました!
クライアントN様の最優先のご希望が、劣化補修と耐震補強でした。
建物に、雨漏りや床の沈みや動物の侵入かも?と思われる
不確定な劣化要素が多くある建物でしたので、
万全を期して
劣化診断のプロの方に入っていただき、劣化調査を行いました。
劣化診断をして頂きながら、同時に弊社で、耐震診断を行いました。
これが、2022年の枝垂れ梅の咲く春頃。
室内・外まわり・屋根・床下・小屋裏と見える範囲は、しっかり調査。報告書も頂きました。
調査の結果、わかったこと。
■擁壁の方向に向かって床が下がっている。
基礎・擁壁にクラックがあり、建物に歪みがでている。
■雨戸の戸袋や屋根が入り組んでいるところに、鳥か動物の巣がある。
■雨漏りは、
外壁仕上げが
カバー工法(現状の上にそのまま重ねて張る工法)となっている点が
原因になっている可能性が高い
新築時の外壁の上にそのままサイディング張。
これ、昔、コマーシャルでよく宣伝していた商品ですね~
■キッチン床下に水漏れの状況有りや
洗面室あたりの床下に湿り気が多くカビがある
等々
Nさまは、
屋根の葺き替えをして耐震補強することを
希望されていましたので、
それを踏まえて、
これをどのように直していくか・・・
設計で、出した答えは・・・
① 屋根を葺き替えて軽い屋根へ
② 増築部分を撤去たうえで使いやすくデザイン
③ 外壁をすべて撤去をして、雨漏りの解消&耐震補強
④ 水まわりを新しく
⑤ リビング ダイニング 水まわりは断熱改修も行う
⑤ 基礎補強
それぞれをもう少し詳しく書いてみます。
① 屋根を葺き替えて軽い屋根へ
屋根形状がとても複雑で
重なり部分からの雨漏りリスクが高く、
鳥や動物が巣を作りやすい状態でした。
土がのっている瓦屋根は
頭が重い状態で耐震的にも不利な状況です。
これを鈑金の軽い屋根に
葺き替えることにしました。
②増築した部分の撤去
今回の建物も旧耐震の建物に多い増築方法でつくられていました。
(家の一辺の外壁を取り払って増築。しかもCB基礎!)
昭和56年以前に建てられた住宅に多い、増築方法のブログはこちら
そこで、増築部分を撤去して
新築時の形に戻しました。
施主さんにとって、
今ある家の部分を壊すという決断は
かなり勇気のいることです。
安全性UPはもちろんですが
暮らし心地が損なわれてはよくないので、
色々検討します。
まず、部屋が狭くなりますよね。
暮らしづらくならないよう、
室内のレイアウトや収納について、事務所で検討。
このように耐震補強と一緒に
暮らしの提案が出来るところは、住宅設計を続けてきたは経験が生きます!
N様にも、不要な物を捨てるなど、物を減らしていただいたうえで、
壁面全体を収納にして、収納量を確保。
既製品家具をおくより、コストはかかりますが
収納量は増えます。
細かい家具を廃棄して頂き、新設しました。
写真右にみえる間仕切り壁は、あえてつくったキッチンとの境。
この壁にスイッチやコンセントが仕組んであります。
そして、
圧迫感を出さないよう、天井は続いていく形にしました。
エアコンも1台で効くはずです。
お引渡し後に伺ったところ、
思ったより狭く感じないとのことで、
特に不便はないとのこと。
ほっとしました~♬
③ 外壁をすべて撤去をして、雨漏りの解消&耐震補強
外壁は見た目はそれほど劣化していないし
室内の水浸みも一部でした。
全面張替になれば、お金もかかるので、これは、悩みました・・・
とはいえ、雨水がどこから侵入しているかわからないことに加え、
重ねて張られたサイディングの張り方をみると
これが悪さをしているだろう・・・ことはわかります。
そうなると、これから先、どこで雨漏りが起きてもおかしくない状況です。
劣化補修が目的で依頼して頂いたことを思い起こし、
N様の
「ここはやり替えたい」という希望に
背中をおしてもらい、すべて撤去して張り替えることにしました。
外壁を張り替えるので、耐震補強も外壁側をメインに行っています。
外壁を全面撤去&張替をしたことで、
非常に危険な状態であった部分が
工事途中で発見されて、
(事前の調査では、わからなかった・・・)
工事中は
「えっ~~~まさか・・・・!!!」状態で大変でしたが、
結果的には、
よかったと思います。
これを気づかずにそのままにしていたら
ホント大変なことになっていたと思います。
外壁をきちんと直すと新築みたいになり気持ち良いですね~
④ 水まわりを新しく
この時代の浴室・洗面室は、
床下に土が入っていて、土台や柱が腐っていることが多いです。
今回も浴室・洗面室・トイレの床下の材料の腐朽がありそう。
また、キッチン、浴室など水まわりの設備機器を新しくする時期でもありました。
水まわりを改修することで、
劣化改修・耐震補強壁設置・設備機器新設を合わせて行っています。
水まわりは、耐震補強というより、構造体が劣化しているケースが多いので、
旧耐震の建築時のままでしたら、予算と相談しながら、改修がお勧めです。
⑤ リビングダイニングは断熱改修も!
リビングダイニング・水まわりは、
床・天井・壁をいったん撤去したので、
断熱材を充填して、サッシを断熱性能の高いものに取り換える
断熱改修もしています。
もちろん、隙間風をなくす気密工事も行っています。
気密工事を省くと、せっかく断熱材を入れても
熱が逃げてしまうので、
断熱工事と気密工事はセットで考えます。
⑤ 基礎補強
床の傾きをなおすのは出来ますが、
地盤の影響からの建物そのものの傾きを完全に直すのは、難しいです。
N様邸は、傾斜地にあり
擁壁側に少し傾いています。
その部分の基礎の一体性を高めるために
効果の高そうなところに
べた基礎を施工しました。
万が一擁壁が崩れて地盤が流出しても、基礎が一体性を保っていれば
建物の倒壊防止に、ある程度の効果はあると思います。
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予想外の工事も発生しましたが、
仮住まいをされていたN様とのやりとりも
大工さんとの連携もうまくいき、2023年春、
無事、完成しました!
関わった方々のご協力のもと
出来る限りのことはやった!と思える
やりきった感のあるお仕事でした!
N様、職人さん方、有難うございました。
リノベーションは
工事途中に
「まさか!」が発生したり、
設計~工事中、山あり谷ありですが
もっている知識と経験を総動員して
現場の職人さんたちとともに造り上げ、
新しい家のようになると
本当にワクワクします!
安全に
心地よく使い続けられるような家にしたい!
プロの力を活かしたリノベーションをしたい!
と思われたら、
新築かリノベーションか迷っている方のご相談もOKです~